〇障害者雇用の基本的準備は?

A.まず情報収集と理解を!

ア.障害者雇用制度について 

〇平成29年の障害者雇用集計結果の主なポイント(厚生労働省)
民間企業の現在の法定雇用率が平成30年4月から上がることが決まっており、障害者雇用に取り組む企業が増えてきています。このような背景も影響して、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新しています。
民間企業(50人以上規模の企業:法定雇用率2.0%)に雇用されている障害者の数は 49万5,795.0人で、前年より4.5%(21,421.0人)増加し、14年連続で過去最高となっています。
障害種別の人数は、身体障害者 33万3,454.0人(対前年比1.8%増)、知的障害者11万2,293.5人(同7.2%増)、精神障害者5万0,047.5人(同19.1%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きくなっています。実雇用率は、6年連続で過去最高の1.97%(前年は1.92%)、法定雇用率達成企業の割合は50.0%(同48.8%)でした。精神障害の雇用が、やはり目立っています。なんといっても障害者雇用のマーケットの中で、働ける身体障害者は既に働いており、知的障害も一定数はいるものの売り手市場で特別支援学校卒業時に就職が決まっている場合も多く、障害者雇用として採用をかけたときに精神手帳をもつ方の応募は多くなりつつあります。この傾向は、今後も続くでしょう。
〇精神障害者の雇用義務化について
精神障害者の職場定着を促進するため、法定雇用率制度や障害者雇用納付金制度において、精神障害者である短時間労働者(※)に関する算定方法を、以下のように見直しました。精神障害者である短時間労働者であって、雇入れから3年以内の方 又は精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方 かつ、平成35年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方は、対象者1人につき雇用率算定方法を原則として0.5 →1としました。※1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である方です。

〇障害者の雇用制度等のあゆみ

1960(昭和35)年 敗戦後傷痍軍人の社会復帰のための身体障害者雇用促進法制定
1970(昭和45)年 心身障害者対策基本法制定
1976(昭和51)年 一定の雇用を割り当てる雇用義務制度(法定雇用率1.5%)
1987(昭和62)年  障害者の雇用の促進等に関する法律制定 知的障害者の雇用実績が雇用率に反映(法定雇用率1.6%へ)
1993(平成5)  年 障害者基本法制定(心身障害者対策基本法の全面改正)
1998(平成10)年 (法定雇用率1.8%へ)
2005(平成17)年   障害者自立支援法制定 発達障害者支援法制定
2006   (平成18)  年  障害者の雇用の促進等に関する法律改正(精神障害者も対象となる)
2007(平成19)年 国連障害者権利条約(2006年)に日本署名(2014年批准)
2011(平成23)年 障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)制定
2013(平成25)年 障害者総合支援法制定 (障害者自立支援法を改正・改称、基本理念やサービス対象者の拡大などを盛り込んだ。)
2013(平成25)年 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律制定(2016年施行)(障害者権利条約、障害者基本法に実効性を持たせるため)(法定雇用率2.0%へ)
2016  (平成28) 年   障害者の雇用の促進等に関する法律改正(差別禁止規定や合理的配慮の概念が導入)
2018   (平成30)年  障害者の雇用の促進等に関する法律の改正 精神障害者の雇用義務化(法定雇用率2.2%へ)

身体障害者➡知的障害者➡精神障害者(発達障害者)の流れで雇用が進展してきたことが理解できます。

★国連の理念 1945年に発足した国際連合の目指した新しい理念は、戦争が再び起こらない世界の実現であり、「人権」が国連の行動指針となった。国際連合憲章では「人種、性、言語または宗教による差別のない、すべての者のための人権および基本的自由の普遍的な尊重および順守」とあるが、この『すべての者』の中に当然障害者も含まれる。

★ノーマライゼーション デンマークがそれまで行ってきた知的障害者の収容施策を見直す「知的障害者に関する1959年福祉法」が制定された。同法では、「障害者がハンディキャップのために、社会において特別扱いをされるのではなく、一人の人間、あるいは社会の一員として普通のあたりまえな人生を送ることのできる環境条件が、常識として存在する状態」をさす考えとして、障害者問題に関する活動に大きく影響する概念となっていった。なお最近では、社会の中で特別視することなく、通常の状態に融合するといった意味の「インテグレーション」がノーマライゼーション実現の手段として使われることがある。国際障害者年に際しての「行動計画」では、「ある社会がその構成員のいくらかの人々を閉め出すような場合、それは弱くもろい社会なのである。障害者は、その社会のほかの異なったニーズを持つ特別な集団と考えられるべきではなく、その通常の人間的なニーズを満たすのに特別の困難を持つ普通の市民と考えられるべきなのである」とノーマライゼーションの概念が述べられている。

★2016(平成28)年 障害者の雇用の促進等に関する法律改正(差別禁止規定や合理的配慮の概念が導入
◎ 障害者に対する差別禁止、合理的配慮の提供義務 を規定 【施行期日 平成28年4月1日】 。
◎ 必要があると認めるときは、厚生労働大臣から事業主に対し、助言、指導又は勧告を実施。
【差別の主な具体例】
募集・採用の機会 では、身体障害、知的障害、精神障害、車いすの利用、人工呼吸器の使用などを理由として採用を 拒否すること など
賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用などでは、障害者であることを理由として、以下のような不当な差別的取扱いを行うこと
○ 賃金を引き下げること、低い賃金を設定すること、昇給をさせないこと
○ 研修、現場実習をうけさせないこと
○ 食堂や休憩室の利用を認めない など不当な差別的取扱いを禁止。
このため、職業能力等を適正に評価した結果といった合理的な理由による異なる取扱いが 禁止されるものではない。

イ.ほかの会社での雇用例を知る

障害者雇用事例について、公的機関が発行している資料で知ることができます。
障害者がどのような仕事に従事しているのか。
ハンディを軽減できる職場環境や設備とはどういうものか。
労働時間などの雇用管理面はどうしているのかなど。
高齢・障害・求職者雇用支援機構|障害者雇用事例リファレンスサービス
障害者雇用の事例集|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

ウ.雇用する事業主への支援・相談機関を知る

〇ハローワーク:公共職業安定所。 国民に安定した雇用機会を確保することを目的に国が設置する行政機関。
<事業主にむけたサービス>
雇用管理上の配慮などについての相談・助言専門機関の紹介、各種助成金の案内雇用率未達成の事業主への指導
ハローワークインターネットサービス
〇職業能力開発校:障害のある方が障害の事情等に応じてその有する能力等を活用し、職業能力の回復、増進、付与等を可能にするための職業訓練を行っています。
厚生労働省 障害者の方を対象とした職業訓練
〇独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
<事業主にむけたサービス>
障害者雇用納付金の申告受付 障害者雇用報奨金などの申請受付 障害者雇用助成金の申請受付 地方アビリンピックの開催など
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構〇障害者職業センター:障害者に対して、職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職場適応援助等の個々の職業リハビリテーションを個々の障害者の状況に応じて実施します。
障害者職業センターには、規模と役割のちがいから以下の3種類の施設があります。
障害者職業総合センター広域障害者職業センター地域障害者職業センター それぞれの規模と役割は、以下の通りです。
・障害者職業総合センター:就労支援の専門職向けに、就業支援技術の向上にむけた研究 職業リハビリテーションに関する知識や技術の向上を図るための研修を行っています。
障害者職業総合センター
・広域障害者職業センター:障害者雇用促進法に基づく「中央広域障害者職業センター」と職業能力開発促進法に基づく「中央障害者職業能力開発校」の2つの側面をもっている機関です。
<事業主にむけたサービス>障害者採用計画と雇用管理等について支援
国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)
国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(岡山県吉備郡)
・地域障害者職業センター
都道府県ごとに47ヶ所 北海道、東京、愛知、大阪、福岡県には支所もある。
<事業主にむけたサービス>障害者雇用の相談や情報提供雇用管理上の課題を分析して「事業主支援計画」を作成事業主支援計画に基づく専門的な支援を行います。
<障害者および事業主にむけたサービス>職場適応援助者(ジョブコーチ)による直接的・専門的な支援 障害者の雇い入れや雇用継続を円滑に進めるための助言・援助、職場適応指導など精神障害者および事業主に対して、主治医と連携した専門的・総合的な支援を行います。
地域障害者職業センター

〇障害者就業・生活支援センター:就職を希望されている障害のある方、あるいは在職中の障がいがある方が抱える課題に応じて、雇用及び福祉の関係機関との連携の下、就業支援担当者と生活支援担当者が協力して、就業面および生活面の一体的な支援を行います。名称が長いため“ナカポツ”や“ナカポツセンター”と呼ぶこともあります。平成29年度 障害者就業・生活支援センター 一覧
〇就労移行支援事業所:一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場さがし、就労後の職場定着のための支援を行います。
WAM NET「就労移行支援」
〇在宅就業支援団体:厚生労働大臣に申請し、障害者の在宅就業を支援する団体として登録を受けている機関です。事業主が在宅就業を支援する団体を介して障害者に業務を発注する場合、障害者雇用納付金制度に基づく特例調整金・特例報酬金の支給対象となります。
障害者在宅就業支援 チャレンジホームオフィス
在宅就業支援団体 一覧

〇発達障害者支援センター:発達障害児(者)とその家族が豊かな地域生活を送れるように、保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを構築しながら、発達障害児(者)とその家族からのさまざまな相談に応じ、指導と助言を行っています。<発達障害者・家族・関係機関などにむけたサービス>日常生活に関する相談療育に関する相談や発達支援就労に関する支援と情報提供発達障害に関する普及啓発・研修
相談窓口の情報:発達障害者支援センターとは – 発達障害情報・支援センター

エ.経営者・人事担当社員・受け入れ部署社員の理解促進

経営者と人事担当者と社員が共通認識をもって、コミュニケーションをとりながら以下の役割を担っていく必要があります。障害者雇用に関する研修が必要な場合もあります。経営者:障害者雇用の方針の決定 全社員への方針の浸透 社員へのメッセージの発信
人事担当社員:障害者雇用計画策定経営者、受け入れ部署との調整採用活動 受け入れ部署社員:障害者の教育訓練障害者の労務管理障害者への理解
独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構「はじめからわかる障害者雇用」p,15

オ.社員に向けた周知

経営者が障害者雇用を進める必要性を示したうえで、採用担当者からは具体的なイメージを持てるような情報を提供します。障害者雇用に関する研修が必要な場合もあります。
社内会議で周知を行う 社内報に記事を掲載する 資料を作成して配布する など。

B.配属部署・職務の選定

配属部署と職務内容を決めるには2つの方法があります。ひとつは既存の職種から従事する職務を選ぶ方法。
もうひとつは、障害者が従事できる職務をつくり出す方法です。

ア.既存の職務から選ぶ 

職場環境の改善や就労支援機器の導入、適切な教育訓練によって既存の職務に障害者が従事する方法です。
一般的には各障害に共通の特性があるので、特性に応じて職務を検討することができます。
肢体不自由者には、移動が少なくて座って行える職務 視覚障害者には、視覚的判断や頻繁な移動の必要がない職務など 独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構「はじめからわかる障害者雇用」p,20

.新規の職務をつくり出す

障害者が従事しやすい職務をつくり出す方法です。例えば、事務所であればコピー、シュレッダー作業、清掃作業、資料のセットと封入など、社員の中に分散して組み込まれている作業を集約して新しい職務にできます。

C.労働条件の設定

ア.雇用形態

従業員の雇用形態は職務内容やその責任の範囲、勤務時間などの労働条件、本人の希望などを踏まえて決定します。また、非正規社員や短時間労働者でも一定の条件のもとに障害者雇用率の算定対象になります。
以下を参考にしてください。

  1週間の労働時間
30時間以上 20時間以上30時間未満
身体障害者 1カウント 0.5カウント
       重度 2カウント 1カウント
知的障害者 1カウント 0.5カウント
       重度 2カウント 1カウント
精神障害者 1カウント 0.5カウント

精神障害者については、精神障害者である短時間労働者に関する算定方法の特例措置がある。

イ.就業時間

就業時間はひとりひとりの状況に応じて検討することが必要です。
就業時間を調整することで働ける人もいるので、時差出勤や短時間勤務、休暇取得などの配慮が望まれます。

ウ.賃金

独立行政法人 高齢・障害・求職者支援機構が発行する『はじめからわかる障害者雇用』を参考にすると、以下の3つの点に留意して賃金を決めることを推奨しています。

 
最低賃金の遵守 障害者との労働契約は基本的に通常の労働契約と変わりありません。

 

障害者を雇用した場合にも最低賃金法が適用されます。

職務評価・業績評価の反映 一律賃金を設定せずに本人の職務遂行能力や業績も賃金に反映したほ

 

うがモチベーションの維持のためにもよいでしょう。

関係機関への相談 最低賃金法8条に基づく最低賃金額の減額特例措置や、重度障害者の

 

特例措置などがあるのでハローワークや労働基準監督署に相談 / 申請

を行ってください。

D.就業規則等社内規定の整備

会社の障害者雇用に対する理想と、受け入れた職場の苦労という現実があります。そのギャップに障害者雇用担当者が板挟みになって対応に苦慮することはよくあることです。これまでのように、個人的に(担当者任せ)対応していくのは非常に無理があります。会社として組織的に対応していくことが求められています。
組織的な対応のためには、就業規則からマニュアルにいたるまでの社内規定の整備が大切です。障害者雇用の担当者が代わっても同じような対応をするために必要不可欠なものです。
・障害者だけに不利・無関係な条項がないか
・福利厚生制度の見直し(障害者としての積極的優遇措置など)
・信賞必罰規定
・診断書等の提出
(障害者のモチベーションを高め、会社のサポートの範囲を明確にしていくメリットがあります。(参照:『メンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』久保修一著) 

〇障害者雇用の流れは?

A.募集活動のすすめかた

ア.HPなど自社で

お金をかけずに自社で取り組める。求職者は、会社に対する関心が高い人、積極的な情報収集を行うことができる人にしぼられる。

イ.ハローワークへの求人申込

障害者雇用の専門援助部門に求人票を提出する。求職登録をして職業相談を受けている人が対象となる。

ウ.就労支援・訓練機関や特別支援学校へ

職業評価や職業準備支援を受けている人、職業訓練を受けている人、就職に向けた準備を行っている人、
特別支援学校の生徒などが対象です。支援機関のスタッフや教員は本人の能力をいかす方法を把握しているので、採用に向けて連携することが大切です。

エ.障害者就職面談会などの活用

ハローワークが主催する障害者職業面接会だけでなく、民間の人材紹介事業所が主催する就活フェアや転職イベントで対面して行う。面接会に出かけることができる人、就職活動中の学生などが対象。

オ.民間の求人サイトと人材紹介サービスの利用

・求人サイト パソコンやスマートフォンから職種や業種、雇用形態などの条件を選ぶことができる利便性の高さから、多くの求職者が登録している。原則有料。
・障害者雇用の人材紹介サービス 幅広い選択肢から自分に合った企業を見つけたい人、ハローワークまで足を運びにくい人が対象。コーディネーターが求職者と企業のマッチングを行ったうえで、双方の条件が一致した場合に応募。有料。

B.インターンシップ等の活用

実際の職場を体験できるインターンシップは、障害者と企業を繋ぐ大きな役割を果たします。求職者にとっては、職場環境(バリアフリー、仕事内容等)を直接体験することで、自分に合った仕事や働き方を見つけ、働く意欲や自信を深める事ができます。また、企業の方にも障害者を知っていただくよい機会になります。そしてそれがお互いにとって、先々のミスマッチを防ぐことにもつながります。
実施期間別では、1日~1週間程度の短期型と、数週間から、場合によっては数ヶ月にもわたる長期型があります。後者の方がより多くの経験と知識を得ることが出来ます。形態で分けると、プロジェクト型と実践型に分けられます。多くの場はプロジェクト型で、参加者でグループを組み、企業が用意したプログラムや課題に取り組みます。現場実践型は他の社員さんに混ざり、実際の現場で働きながら仕の体験をします。
特別支援学校の生徒が、参加する職場実習という制度もあります。2週間程度、企業に通って仕事の経験をするものです。雇用する前にインターンシップや実習を行なうメリットは、短い時間の採用面接だけではわからないことが、企業側も実習生も見えてくることです。面接や書類だけではわからない部分がたくさんあります。それがある程度の実習期間で接することにより、実習生本人の能力やそれが業務にマッチングしているか、社風にあっているか、他の社員とのかかわりなどを見ることができます。

C.面接の実施

スキルや能力、意欲、協調性など一般的な事項を確認するとともに、職務遂行に関係した障害状況や職場での配慮事項についても確認していくことが必要です。

ア.注意する点

障害のある求職者と面接をする際には、障害者雇用促進法が定めている「障害者差別禁止」と「合理的配慮提供」の指針に留意することが必要です。
「障害者差別禁止指針」第3差別の禁止 1 募集及び採用
(2) 募集又は採用に関し、次に掲げる措置のように、障害者であることを理由として、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当する。ただし、14に掲げる措置を講ずる場合については、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 障害者であることを理由として、障害者を募集又は採用の対象から排除すること。
ロ 募集又は採用に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 採用の基準を満たす者の中から障害者でない者を優先して採用すること。
14 法違反とならない場合
1から13までに関し、次に掲げる措置を講ずることは、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
イ 積極的差別是正措置として、障害者でない者と比較して障害者を有利に取り扱うこと。
ロ 合理的配慮を提供し、労働能力等を適正に評価した結果として障害者でない者と異なる取扱いをすること。
ハ 合理的配慮に係る措置を講ずること(その結果として、障害者でない者と異なる取扱いとなること)。
ニ 障害者専用の求人の採用選考又は採用後において、仕事をする上での能力及び適性の判断、合理的配慮の提供のためなど、雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること。(厚生労働省 改正障害者雇用促進法に基づく「障害者差別禁止指針」と「合理的配慮指針」)

イ.面接の留意点と質問の項目

障害に関する質問をする際には、本人の同意を得ることから始まります。本人の同意を得る手順については、厚生労働省「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が参考になります。会社が「本人の同意を得た」と主張するためには、利用目的を明示している必要があるのですが、ガイドラインが「本人に対して明示する利用目的等の事項」として掲げる下記の事項が記載されており、署名欄のある同意書などを用意しておきましょう。(参照:『メンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』久保修一著)
本人に対して明示する利用目的等の事項
① 利用目的(障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調
整金又は報奨金の申請のために用いること)
② ①の報告等に必要な個人情報の内容
③ 取得した個人情報は、原則として毎年度利用するものであること
④ 利用目的の達成に必要な範囲内で、障害等級の変更や精神障害者保健福祉手
帳の有効期限等について確認を行う場合があること
⑤ 障害者手帳を返却した場合や、障害等級の変更があった場合は、その旨人事
担当者まで申し出てほしいこと
⑥ 特例子会社又は関係会社の場合、取得した情報を親事業主に提供すること
なお、これらに加え、
⑦ 障害者本人に対する公的支援策や企業の支援策
主な質問内容は以下の項目が考えられます。

 
障害関係の質問 ・障害の状況
・治療の必要性と内容
・通院 / 服薬の状況
・必要な支援内容
職場生活関係の質問 ・通勤の方法
・通勤経路と時間
・職場内の移動方法
職務遂行に関する質問 ・希望する仕事
・仕事に関するスキルの習得状況
ー専門知識
ー機器などの操作
ーパソコン操作
ー運転免許など
・コミュニケーション方法
ーメール
ー電話
ー聴覚障害の場合はコミュニケーション手段
・出張、異動の可否

★職業準備性の確認
「職業準備性」とは、特定の職業に就くための技術や資格の習得状況ではなく、どの職業にも共通して必要とされる職業人としての基礎的な要件のことです。
〇障害・疾病管理に関する事項
・障害(疾病)の事を正しく理解している
・障害(疾病)の自己管理ができる(治療や検査のための通院、定期的な服薬)
・障害(疾病)が悪化した場合に、医師に相談するなど適切な対応ができる
〇日常生活技能に関する事項
・規則正しい生活習慣が身についている
・身辺処理が自立している
・挨拶や返事ができる
・報告・連絡ができる
・わからない事には質問や相談ができる
・自分一人でできない場合は助けを求めることができる
・ミスした場合に謝罪できる
・感情的にならない
・周囲と協調できる
〇基本的労働習慣
・一人で通勤できる
・職場の規則を守る
・就業時間中、安定して仕事に取り組める
・危険を察知できる   (参照:『障害者雇用の実務』労務行政研究所)

D.雇用支援の活用

ア.障害者雇用納付金制度に基づく助成金

これらの措置を行うことにより生じる経済的負担の調整ならびに障害者の雇用の促進および継続を図るため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」といいます。)が予算の範囲内で支給するものです。
・障害者作業施設設置等助成金(作業施設、作業設備等の整備を行う事業主の方への助成金)
・障害者福祉施設設置等助成金(福利厚生施設の整備を行う事業主等の方への助成金)
・障害者介助等助成金(雇用管理のために必要な介助等の措置を行う事業主の方への助成金)
・重度障害者等通勤対策助成金(通勤を容易にするための措置を行う事業主等の方への助成金)
・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金(障害者を多数継続雇用し施設等の整備等を行う事業主の方への助成金)

イ.雇用保険の助成制度

・雇い入れた場合
・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース、障害者初回雇用コース)
・トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
・障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース、障害者雇用安定助成金(中小企業障害者多数雇用施設設置等コース)

・施設等の整備や適切な雇用管理の措置を行った場合(障害者雇用納付金制度に基づく助成金)
・職業能力開発をした場合(障害者職業能力開発助成金)
・職場定着のための措置を実施した場合 障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)
などがあげられます。
実施される年度によって内容が変わることもあり、常に最新の状況を確認する必要があります。
また、最初に助成金ありきの障害者雇用をしてしまうことは、会社にとっても、また雇用される障害者の方にとってもこんなはずじゃなかったということになりかねないので、慎重かつ適切に申請することが求められます。

〇気を付けるべきことは?

社会では、障害者をやさしく受け入れるべきだという建前が一方で存在します。しかし、障害者を受け入れた部署ではそんなきれいごとでは済まない苦労があるのが現実です。
その苦労にもかかわらず、中には障害者と会社とのトラブルになってしまうことがあります。
では、その原因はどこにあるのでしょうか?それは、障害者を受け入れる職場や同僚の無理解と無関心です。
職場での多数派である障害者以外の側の意識を変えることがまずトラブルにならない第一歩です。
(参照:『本書を読まずに障害者を雇用してはいけません!』久保修一著)
「障害者は弱い存在だから、我慢しなければいけない。慈善事業だと思って取り組まなければ」という考えが、障害者の「働いて人の役に立ちたい」という気持ちを育てることを阻んでしまうことがあります。まず、障害者を同僚としてとらえ、戦力の一端を担えるような関係を培っていくことが必要です。
そのためには、社員の障害特性に対する理解を促す研修と障害者との仕事の上でのコミュニケーションを図っていくことがトラブルを予防することに他ならないと考えます。

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